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みなさんは、歌舞伎(かぶき)のことを知っていますか? 日本の伝統芸能のひとつなので、詳しくは知らなくても、名前ぐらいは聞いたことがあると思います。何となく、派手な化粧をした人が、ちょっと変わった動きで演劇をしている……そう、それです。 白塗りをした顔に、朱色などでラインを描いたインパクトのある化粧は、一度ぐらいは見たことがあるかと思います。この朱色で描かれた模様のことを「くまどり」と言います。今回紹介するのは、そんな歌舞伎役者のくまどりに似た模様を持つ熱帯魚です。
■くまどり模様が美しい、アフリカから来た魚
くまどり模様にちなんだ名前がつけられた魚は、いくつか知られています。特に海水魚に多く、そのまんま「クマドリ」という名前の魚もいます。今回紹介するのは、西アフリカに住んでいる「ミクロクテノポマ・アンソルギー」という淡水の魚になります。ちょっと読みづらい名前ですが、観賞魚として熱帯魚屋さんでも売られています。 普段はくすんだ茶色のやや地味な魚なので、熱帯魚屋さんでもマイナーな存在なのですが、興奮したときにとても綺麗な色になることから隠れた人気があります。体には黒いラインが入り、各ヒレはオレンジ色に染まります。また顔にもくまどり模様が入ることから、まるで歌舞伎役者のようです。 さて、歌舞伎とは、「傾く(かぶく)」という古い言葉が変化したもので、戦国時代から江戸時代にかけて、派手な衣装をして風変わりな行動をする人たちのことを「カブキ者」と呼んでいました。そんなカブキ者を真似することから生まれたのが、歌舞伎だとされています。 まさにカブキ者も顔負けの、この派手な魚。実は、見た目以外にも「傾く」行動をとることが知られています。
■カブク魚が、見得(みえ)を切る
歌舞伎の演技の中に、「見得を切る」というものがあります。簡単に説明すると、一瞬動きを止めて、にらみ付けるように一定のポーズをとる演技のことです。この「ミクロクテノポマ・アンソルギー」は、そんな見得のような仕草をすることがたまにあります。 相手を威嚇(いかく)するときのポーズなのですが、各ヒレを大きく広げ、ひときわ体の色が鮮やかになります。目もギョロっとさせて、こちらをにらみ付けている様なそぶりです。右にある写真が正にそれで、カメラのレンズを向けた私を威嚇しているところです。まるで歌舞伎役者が、見得を切っているような仕草です。 しかし、普段はとても大人しく、どちらかと言えばじっとしていることが多い魚です。相手を威嚇するときや、メスにアプローチする時にだけ、まるで同じ魚とは思えないほど美しく変化します。
■ちょっと変わった産卵と子育て
やっぱり魚の世界のカブキ者だけあって、その繁殖方法も少し変わっています。魚の場合、親が卵を産みっぱなしで子育てをしない種類がほとんどなのですが、この魚は巣を作り、子育てまでこなします。 オスが口から出す分泌液と空気で、水面にこんもりとした泡状の巣を作ります。これを泡巣と呼び、産卵前の準備としてオスが作ります。いざメスが産卵すると、卵をオス親がせっせと泡巣まで運び、卵が孵化(ふか)するまで世話をします。 他の魚に卵が食べられないように常に泡巣の下で番をして、時折口を使って新鮮な水を送ったりします。卵が孵化してからも子供が泳げるようになるまでは、オス親はほとんどエサも食べずにずっと世話をしています。カブキ者のように派手な見た目からは想像が付かないほど、優しい一面をもった魚です。 大きさは8センチメートルほどの小さな魚で、飼育もそれほど難しくはありません。自宅の水槽で泳がせれば、カブクおもしろい習性を観察できます。ぜひ、機会があれば、飼ってみてください。 |
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| まるで歌舞伎役者が見得を切ったような迫力のあるポーズ。 |
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| 美しい体の黒いラインは、歌舞伎のくまどり模様を連想させます。 |
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